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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)3254号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人早川義彦の上告趣意第一点について。

所論は、単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、労働基準法一二〇条一号にいわゆる第二四条の規定に違反した者とは、同法二四条の規定により賃金を支払うべき使用者であって、しかも、同条に違反した者をいうものと解するを相当とする。そして、労働基準法で使用者とは、同法一〇条において、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」と規定している。されば、第一審判決が、被告人を「表面上は同会社の有限責任社員に過ぎないが事実上は右設立以来同会社は同被告人経営の個人商店の如く同会社運営に関する実権を握って同会社の経営を担当しているもの」と認定判示して、本件行為に対し同法二四条二項、一二〇条一号等を適用したのは、その法令の適用が正当であって、所論の違法がないものといわなければならない。それ故本件については刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

同第二点について。

所論は、量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らないし、また、同四一一条を適用すべきものとも認められない。

よって、同四一四条、三八六条一項三号に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

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